シリーズ:雪下遺稿
ゆきのしたいこう。
物語を食べるという竜の加護の下で栄える氷雪の国において、祈りのかわりに誰かが語った物語の断片を集めました。
ひとつの国と歴史を巡り、視点と時代を変えて語っています。
――という体裁の物語群。
シリーズの並びは執筆順に基づき、必ずしも時系列に基づくわけではありません。
詳しいことは準備中です。
戴冠、或いは暁を待つ(2018年完結、約21万文字)
夢見る竜の支配するかの国の長い歴史において、
唯一の女王たる〈鉄の女王〉ルカ・アデル・セン・クレイゼラッドに関する記録は少ない。
ただひとつ、若かりし日の彼女自身が綴ったとされる、
真偽もわからぬ物語を除いては。
――美少女のような姿の魔術師と、男装の王女の、王位簒奪に至るまでの前日譚。
梟は極北に皓の星を見るか(2019年完結、掲載準備中)
その国には古くより竜が棲み、宝物のかわりに物語を枕に眠るという。
されども北の果て、〈琥珀樹海〉を臨む地には偉大なる竜の恵みも届かない。
湖上の神殿に暮らす神官ばかりが、その栄華をしらしめる。
クロイツは彼の地に暮らす神官見習いであるが、あるべき姿には興味がない。
かわりに彼が求めるのは、いずれもっとも偉大な獣として、己の名を残すこと――
単発
52Hzの鯨(2019年完結)
《あらすじ》 この世界には「竜」がいる。
契りを結べるのは、紫の目を持つ人間だけ。
竜と契る権利を持って生まれたイェナは、幼い頃から彼らの力に興味がなかった。
そんな彼女が海辺の町で出会った水竜もまた、契約者を求めない風変わりな竜だった。
〈海の秘密〉を知るという竜を追い、イェナは海洋研究の道に踏み込む。
太古の遺物、竜を呼ぶ歌、生物種同定プログラム、脳のレプリカ――
知識と技術をよすがに歩いた道程は、七年の時を経てたしかに竜へと届いたかに見えたが……
藤井環さん執筆の「月色相冠」シリーズの世界観をお借りした中編です。
原作をキャラなどはほぼ出てこないため、単品でもお読みいただくことができます。
掲載予定なし
本にした物語をご紹介までに。
サークル「月燈文庫」のサイトに飛びます。
〈王の知恵〉のマルジナリア(2020年完結、約14万文字)
帝立図書館の本たちの長兄は、魔術書である。
魔神憑きのその本の名を、表題に曰く〈王の知恵〉。
ある嵐の夜、彼は図書館の客人より嬰児をひとり預かった。
客人が言うには、この子どもは魔神の望む知識を教えてくれるのだという。
しかし人ならざる身にはどうも真っ当な人間に育つとは思えず――
果たしてこの子は〈王の知恵〉の望みを叶えてくれるのか。
ついでにきちんと図書館を巣立ってくれるのか。
育児書ではない〈王の知恵〉(と、いい年した人間の友達)の奮闘が始まる。
不思議な本と砂漠の国を巡る、アラビア風ファンタジー。